© 2015-2019 Fumi Kashiwagi

    文庫本を鞄に


    最近、久しぶりに文庫本を持ち歩いている。

    というのも、気になる俳優が「最近は、スマホを見ている人ばかりだが、そんな中で本を読んでいる人がいると、いいなと思う」という話をしていたので、あまりにも単純だけれど、それを地でやっているという訳なのだ。

    これまで、移動中やちょっとした空き時間は、ipadを触ることが多かったが、はじめてしまうと、必要以上に見ていることが多く、妙な癖がついてしまったと思っていたところだったので、その点でもよいきっかけだった。

    家にある本の中からなんとなく選んだのは、ニーチェの『ツァラトゥストラはこう言った』。タイトルの脇に、「だれでも読めるが、だれにも読めない書物」とあるように、片手間に読むような本ではないのだけれど、読み始めると、はっとさせられる美しい言葉の数々に、しばし現実逃避してしまう。

    没落やら狂気やらの言葉は、単語としては心を寒々とさせるのかもしれないが、ツァラトゥストラの言葉となると、何やら妖しい光を放って心を捉える。少なくともその破片を持つ者としては、放たれる光に思わず惹かれてしまうのだ。

    人間における偉大なところ、それはかれが橋であって、自己目的ではないということだ。人間において愛さるべきところ、それは、かれが移りゆきであり、没落であるということである。

    舞踏する星を産むことができるためには、ひとは自分のなかに混沌を残していなければならない。

    #book